「外国人は、3カ月滞在すればだれでも国民健康保険に入れる。それを狙って入国する外国人が後を絶たない。外国人受け入れ政策により、国保目当ての外国人の入国が殺到し、国民皆保険制度が立ち行かなくなってしまう。」

検証

「外国人は、3か月日本に滞在すればだれでも国保に入れる」という認識は誤りです。
外国人で国保に入れるのは、住民登録をした人、すなわち3か月を超える在留資格を持つ人です。
たとえば、観光ビザ(短期滞在)で入国した人は、結果として滞在が3か月を超えたとしても、住民登録の対象にはならず、国保に入ることはできません1
また、3か月を超える(6か月、1年等の)在留資格を持つ人のすべてが国保に加入するわけではありません。技能実習生も含め多くの外国人は、国内の企業に雇用されているため、勤めている会社の健康保険に加入します。保険料は企業と労働者で折半されます。日本国内に住民登録があっても、会社の健康保険など他の医療保険に入っている人は国保の対象から除外されるため、外国人で国保に入るのは、留学の在留資格を持つ人や、会社勤めをしていない人などに限られます。

統計から「外国人の国保加入者数の動向」を見ても、この5年間の在留外国人数は、2019年 293万3137人から2023年 341万99人と約47万6000人の増加であるのに対し、外国人の国保被保険者数は2019年 99万人から2023年 97万人で、約2万人の減少となっています。この中には、長く日本に住んでいて、高齢等の理由により会社の健康保険から国保に移行した人が含まれている可能性があるので、新規入国による国保加入件数はさらに少なくなると思われます。
「外国人の国保加入者構成」からも同様のことが言えます。2023年9月末の日本人も含めた国保被保険者の総数2378万人のうち、外国人被保険者数は97万人(全体の約4.0%)となっています。この約97万人のうち、半分以上となる約50万人については、20歳から39歳となっています。一方日本人については、65歳から74歳の高齢者層が最大値を示しています2。外国人の国保加入者は、一般的には医療にかかることが少ない若年層が多数を占めていることがわかります。

「国民健康保険の総医療費における外国人の占める割合」も見てみましょう。2023年3月から2024年2月までの総医療費は約8兆9千億円、そのうち外国人については約1240億円と、全体の1.39%にすぎません3。 厚生労働省も、「全国的な傾向としては、外国人の被保険者に対する国内の診療実績の数値は、必ずしも被保険者に占める外国人の割合に比して大きいとは言えない。」との見解を示しており、外国人の方が国保を使う割合が少ないことを認めています4。 石破茂総理大臣も国会において「外国人が制度を多く利用しているとの状況にはない」と答弁しています5

結論

「3か月日本に滞在すれば国保に入れる」というのは間違いです。結果として滞在が3か月以上になったとしても、新たに住民登録ができる在留資格を取得しない限り、国保に入ることはできません。 また、外国人の国保加入者は一般的には医療にかかることが少ない若年層が多く、結果として国保を使うことも少なくなります。国民健康保険の総医療費における外国人の占める割合を見ても、全体の1.39%にすぎず、外国人の被保険者に対する国内の診療実績の数値は、必ずしも被保険者に占める外国人の割合に比して大きいとは言えないことを、厚労省も認めています。外国人が皆保険制度に「ただ乗り」するために国内に殺到し、医療費の支出を増やしている、という事実はないのです。

脚注

  1. 国民健康保険法施行規則第1条 ↩︎
  2. 全国高齢者医療主管課(部)長及び国民健康保険主管課(部)長並びに後期高齢者医療広域連合事務局長会議資料(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_54381.html↩︎
  3. 2025.3.13 全国高齢者医療主管課(部)長及び国民健康保険主管課(部)長並びに後期高齢者医療広域連合事務局長会議における保険局国民健康保険課説明資料(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_54381.html↩︎
  4. 3に同じ ↩︎
  5. 第217回国会 衆議院 本会議 第13号 令和7年3月31日(https://kokkai.ndl.go.jp/txt/121705254X01320250331/10↩︎