「外国人の多くが国民健康保険料を滞納している。納付率は、日本人は93%だが、外国人は63%しかない。外国人が滞納した保険料が、国民の納めた税金で補填され、自治体財政を圧迫している。外国人の未納のツケを日本人が払っている。」
検証
外国人の国保未納に関する全国の統計はありません。「63%」という数字は、外国人の国保納付率を把握している150市区町村に厚労省が実態を聞き取り、昨年12月末時点で集計したものを、2025年4月22日に自民党の外国人材等に関する特別委員会と在留外国人に係る医療ワーキングチームの席上で示されたものですが、その詳細や算定根拠は明らかにされていません1。
一方、東京都新宿区は、区全体の収入率(納付率)が71.15%であるのに対し、外国人は47.13%であることを公表しています。この結果に対し新宿区は、以下のように分析しています。『令和5年度における外国人被保険者の在留資格別収入率について、在留期間が無期限である「永住者」の収入率と比べ、「技能」「特定活動」等、在留期間が限られている方の収入率が全体的に低いことがわかります。このことから、在留期間の短い外国人被保険者に国民健康保険の制度を周知し納付を促すことが、収納率の向上につながると考えます。』と分析しています。事実、新宿区における外国人の収入率は、令和2年は31.05%だったのが、令和3年は36.64%、令和4年度は42.05%、そして令和5年度は47.13%と、年々向上しています2。
これらの未収金額は、保険料徴収の時効が成立する2年後に保険者(自治体)によって行われる不納欠損処理を経て、自治体の一般会計から法定外繰り入れの処理を行います。国保料の未納が、国保及び自治体財政に影響を及ぼすことは事実ですが、未収金には日本人によるものも多く含まれ、また、一般会計における歳入の中には、外国人が納付した税金も含まれていますから、日本人だけが損をしているわけではありません。
なお、新宿区における日本人の賦課額は110億9574万9000円、収入額は84億6946万6000円、未収金額は26億2628万3000円となっています。外国人の賦課額は23億9352万1000円、収入額は11億2817万3000円、未収金額は12億6534万8000円となっています。全体の賦課額は134億8927万円、収入額は95億9763万9000円、未収金額は38億9163万1000円となっています。 納付率の高い日本人の未収金の方が、金額的にはやや多くなっています。
結論
国民健康保険料における、外国人の収納率が、日本人より低い自治体は確かに存在しています。しかし、その対策は、外国人被保険者に国民健康保険の趣旨を周知し納付を促すことで解決されるべきものです。
また未収金は、最終的には自治体の負担になりますが、その原資となる市民税は外国人も負担しており、また未収金は日本人によるものも多く含まれていますから、外国人の未納のツケを日本人が払っている、という指摘は誤りです。
脚注
- 2025.4.22産経新聞「在日外国人の国保未納率37%、日本人含む全体は7% 厚労省が初の集計、保険財政を圧迫」(https://www.sankei.com/article/20250422-VN4AUDMQW5L27H6SS3TL3HROPM/) ↩︎
- 「新宿区国民健康保険の現状と取組(令和6年度)」(https://www.city.shinjuku.lg.jp/content/000434682.pdf) ↩︎