在留資格を偽って治療目的で入国し、入国してから短期間のうちに高額療養費制度を利用する外国人が増えている。制度を見直すべきではないか。
検証
2023年3月から2024年2月までの総医療費は約8兆9千億円、そのうち高額療養費の該当件数は9万7302件で全体の1.04%、支給額は118億円で全体の1.21%です。これは、総医療費約8兆9千億円における外国人の総医療費1240億円の比率である1.39%よりもさらに少ない数です。
また、「安価で高度な皆保険制度を目当てに、目的を偽って在留資格を取得し、医療サービスを受ける」ということについては、厚生労働省が2017年に全レセプト点検による調査を行っていますが、「在留外国人不適正事案の実態把握を行ったところ、その蓋然性があると考えられる事例は、ほぼ確認されなかった」としています。しかも厚労省は同年から、「在留外国人の国民健康保険適用の不適正事案に関する通知制度」により、不正に在留資格を取得して国保に加入し、高額療養費等の給付を受ける等の事案を、自治体から入国管理局に通知する仕組みを設けていますが、通知制度開始から現在まで、不正が判明し在留資格をはく奪された事案は0件であることが、厚労省の資料で示されています1。

国民健康保険をはじめとする社会保険は、民間の保険と違い、個人や企業が自由に契約、加入するものではなく、その意志に関係なく法律で加入を義務付けられている公的な保険です2。たとえ保険料納付期間が短かったとしても、制度を使うことに何ら問題はありません。むしろ、外国人が入国後すぐに制度を使うのを防ぐために、高額療養費の給付から排除するような「改正」を行えば、義務を課しておきながら給付を制限することになり、皆保険制度の原則に反する結果となります。
結論
外国人の高額療養費制度利用が保険財政を圧迫している、という事実やデータは存在していません。
また厚労省の調査において、「安価で高度な皆保険制度を目当てに、目的を偽って在留資格を取得し、医療サービスを受ける事例」については、0件と報告されています。
国民健康保険をはじめとする社会保険は、その意志に関係なく法律で加入を義務付けられている保険です。在留期間が短い外国人がこれらの制度を使うことに何ら問題はありません。むしろ、入国間もない外国人を、高額療養費の給付から排除するような「改正」を行えば、義務を課しておきながら給付を制限することになり、皆保険制度の原則に反する結果となります。